大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福島地方裁判所 昭和43年(わ)213号 判決 1969年7月12日

本籍

福島県西白河郡中島村大字二子塚字西内四八番地

住居

同県いわき市平字梅香町二〇番地の三

会社員

小林光彦

昭和七年七月一七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は次のとおり判決する。

公判出席検察官 葛西宏安

主文

被告人を懲役八月に処する。

但し、本裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(犯罪事実)

被告人は、昭和二一年ごろ満州から引揚げの後、昭和二三年以降福島県いわき市平字一丁目三一番地所在の洋服販売業鈴木勘氏商店に住込店員として勤務し、昭和二八年三月同店の株式会社改組とともに取締役となり、販売担当の支配人の責に任じてきたものであるが、昭和二四年ごろから同三六、七年ごろまでの間、株式の売買により利益を収め、ついで割引債券に切替えるなどして利殖し、これらの資金をもとに昭和三九年六月ころから株式会社東京大証との間に手形再割引取引をなして割引収入を得ていたところ、自己に対する所得税を免れる目的をもつて、手形取立委託に他人名義を用いたり、利益は架空名義の預金とするなどの不正な手段によりその所得を秘匿し、

第一、昭和四〇年一月一日から同年一二月三一日までの同年度の実際の所得金額は二九、六二六、一九八円で、これに対する所得税額は一五、一七七、九〇〇円であつたにも拘わらず、申告期限である昭和四一年三月一五日までに所轄いわき税務署長に対し所得税の確定申告書を提出せず、もつて右所得金額に対する所得税額一五、一七七、九〇〇円をほ脱し、

第二、同四一年一月一日から同年一二月三一日までの同年度の実際の所得金額は一七、七七八、三二八円で、これに対する所得税額は八、一一九、〇〇〇円であつたにも拘わらず、申告期限である昭和四二年三月一五日までに所轄いわき税務署長に対し所得税の確定申告書を提出せず、もつて右所得金額に対する所得税額八、一一九、〇〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

右判示事実は、

一、被告人の当公判廷における供述(犯意否認に関する部分も含む)

一、被告人の検察官に対する供述調書三通ならびに同人の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(記録第五分冊)

一、大蔵事務官作成の銀行調査書(第二分冊)

一、同受取割引料等の調査書、貸倒損の調査書、預貯金および利息の調査書、割引債券等の調査書、借入金および支払利子の調査書各一通(第三分冊)

一、赤上忠位の大蔵事務官に対する質問てん末書四通(但し昭和四二年一一月一二日付のうち第一〇問ないし第一三問関係部分を除く)(第五分冊)

一、赤上忠位の検察官に対する供述調書一通(同)

一、大蔵事務官の臨検てん末書一通、検査てん末書三通(第一分冊)

一、山口睦夫、酒井喜子の大蔵事務官に対する質問てん末書各一通(同)

一、橋本博、鈴木美代の大蔵事務官に対する質問てん末書各二通(同)

一、新井操の大蔵事務官に対する質問てん末書一通(同)

一、菊田保次郎、大森守共同名義の上申書二通(同)

一、吉田昌士の上申書一通(同)

一、鈴木勘氏商店名義の上申書一通(同)

一、小沢健治の「手形の決済状況調」と題する書面一通(同)

一、被告人の上申書一通(第五分冊)

一、大蔵事務官作成の歩合台帳(一)(二)の各抄本(第四分冊)

一、押収に係る支払歩合表(昭和四四年押第一四号の一)、同じく所得税源泉徴収簿一綴(同押号の三)

一、大蔵事務官作成の脱税額計算書謄本二通(第一分冊)

を総合してそれぞれこれを認める。

(法令の適用)

所得税法第二三八条第一項(所定刑中懲役刑を選択)。

刑法第一五条第一項第一号。

刑事訴訟法第一八一条第一項本文。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 金末和雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例